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ACT3
どうしてこんなことに。 どうしてこんなことに。 どうしてこんなことに。 ――答えてくれる彼は、もういない。 車を走らせること1時間と少し、レンバルトは海に来ていた。とはいっても、フォロン達のように浜辺にいるわけではない。依頼の手がかりを追ってやってきたのは、海は海でも船着場の方であった。ただし、ここからそう遠くない場所に浜辺もあり、フォロン達が遊びに来ていたのがそこであったのだが、そのことをレンバルトは知る由もない。ともかく、レンバルトは車から降りると、潮風を受けながら人を捜し始めた。 「あ、すいません。ちょっといいですか?」 レンバルトは、近くにいた船乗りに声を掛けた。日焼けして、がっしりとした体格の船乗りは――自分の船だろうか――船の手入れをしていて、タオルで汗を拭きながら振り返った。 「うん、なんだい?」 見た目よりは幾分か優しそうな笑顔で、船乗りはレンバルトと向き合った。レンバルトも人当たりのいい笑みを浮かべながら、船乗りに尋ねた。 「実は、船を捜しているんです」 「船?」 依頼者であるティーンによれば、失踪した2人――エヴァンスは船を用意していたらしい。ならば、とりあえずその船について調べてみれば、2人の行方が分かるのではないかとレンバルトは考えたのだ。 「えぇ。この辺にレンタルできる船ってありますかね?」 「レンタル……いやぁ、そういうのはないと思うけどなぁ」 しかし、レンバルトの予想に反して、船乗りの答えは否定的なものであった。そこで、どうしたものかとレンバルトは考え込む。そんなレンバルトの様子を見て、船乗りは丁寧に説明してくれた。 「兄さん、船を借りたいのか? だけどなぁ、この辺の船は全部誰かしらが私有物だからな……」 「全部、ですか?」 「あぁ、全部な」 それを聞いて、数秒レンバルトは頭の中を整理する。そこで、1つの仮定を立て、質問を組み立てる。 「それじゃあ、最近、戻ってきてない船ってありますか?」 「んん?」 レンバルトの質問を受けて、船乗りはしばらく船着場を見回したり考え込んだりする。そして、ゆうに30秒は経過してから、ゆっくりと口を開いた。 「あー、たしかに、ここ数日戻ってきてない船はあるが……別に珍しいことじゃないぞ?」 レンバルトの質問を誤解したのか、船乗りはそう付け加えてくれた。とりあえず、レンバルトは思いついた仮定の真偽を確かめるため、船乗りに頭を下げた。 「すいません、分かるだけ教えてください!」 「あ、あぁ、別に構わないが……」 その勢いに圧倒された船乗りは、そのまま返事をしてしまう。そして、覚えているだけ船の名前や持ち主のことについて話し始める。レンバルトはペンと紙を取り出すと、そこに船乗りの言葉をもの凄いスピードで書きとめ始めた。 夕方――といっても差し支えない時間帯、しかし、夏では夕暮れにはまだまだ時間がある。次第に傾く陽射しを横に受けながら、フォロンは少し眩しそうに目を細めながら浜辺を歩いていた。ジャリ、ジャリと踏みしめる砂浜に残る足跡は2組ある。フォロンと、その傍らにいるのはコーティカルテである。いつもは、どちらかといえばフォロンにまとわりついて五月蝿くしている印象の強い彼女であったが、今は一転、フォロンの隣で少し俯き加減で寄り添っているという感じである。その頬がいつもより赤くなっているのは、陽射しのせいだけではないだろう。 「……こうして、2人きりでゆっくりと歩けるのは久しぶりだね」 心地よい沈黙を保ちながら、フォロンはふと思いついたことを言った。 「そうか。……そうだな」 フォロンが神曲楽士としてツゲ神曲楽士派遣事務所で働き始めた当初、フォロンとコーティカルテは徒歩で事務所まで通勤していた。毎朝、それは変わることなく2人は事務所への道を一緒に歩いていたのだった。しかし、その光景はフォロンが事務所からフォロン専用のバイクを渡されたことであっけなく終わってしまうことになったのである。フォロン専用のバイクは、その特殊性ゆえに常にフォロンの近くにあった方が都合がよい……というか、いざというとき傍になければ困る。そのため事務所から買い与えられたフォロン専用のバイクは、半ば以上フォロンの私物とならざるを得なかったのである。ちなみに、バイクの代金は毎月の給料から少しずつ引かれていて、最終的にフォロンが買い取ることになっていたりする。ともかく、フォロンは、毎朝バイクの後ろにコーティカルテを乗せて事務所に出勤するようになったのである。必然的に、歩いて出勤するという機会はほぼなくなり、こうした時間は貴重なものになっていた。 「最近は結構忙しいし……こうして改めて意識してみないと、コーティと過ごす時間があまりに普通になりすぎてた、というか」 そこで、フォロンは考え込むように一息つく。 「うん、でも、うまく言えないけど……やっぱりコーティは、僕にとって特別なんだと、思う」 「ばっ……!? フォロン、お前――っ!!?」 途端に、コーティカルテは真っ赤になってフォロンの方を向く。慌てた様子のコーティカルテに、自分が言ったことの意味を深く考えていない――というより、別の次元で解釈している――フォロンは驚いたように瞳を見開いた。 「ど、どうしたの?」 「う……ぁ、なんでもないっ」 そして、コーティカルテはもの凄い勢いでソッポを向いてしまう。この辺が、フォロンが鈍感たる所以なのだが、こればかりは致し方ないというものである。もちろん、それはコーティカルテにとって不満なことでもあるのだが、今回のフォロンの言葉はそれを帳消しにして十分余りあるものだったのだ。実際、気を良くしたコーティカルテは、さっきまでのおしとやかな雰囲気は何処へやらといった感じで口を開いた。 「フォロン、知っているか? 海には精霊が多くいるのだぞ」 「あ、うん。聞いたことあるよ。……でも、なんでなのかな?」 フォロンが首を傾げると、フフンと自慢するかのようにコーティカルテは胸を張って続きを言った。 「別に海に限ったことではないのだ。……フォロン、耳を澄ましてみろ」 「……?」 疑問符を浮かべながらも、フォロンは薄くまぶたを閉じて耳に神経を集中させる。コーティカルテも、フォロンに倣うように軽く目を閉じた。そうして、無言に時間が数十秒流れる。ふいに、コーティカルテはフォロンに尋ねる。 「……どうだ?」 「……うん、心地いい音がする」 フォロンは、今の気持ちをできるだけ素直に答えた。それでも、先程まで胸に沸き起こった感情の渦を全て吐き出すことができなかった。フォロンの耳は、たしかに何をかを捕らえたのだが、それが上手く形になることはなかった。 「そうだ。……これもまた、神曲なのだ」 コーティカルテは、そんなフォロンの様子を見て満足そうに頷いた。そして、そのコーティカルテの言葉は、まるで砂漠に染み込む水のようにフォロンの心にすっと溶けていったのだった。 「神曲……そうか、そうなんだ」 驚くというよりは、むしろ「あぁ、なるほど」といった納得の意味合いが強かった。 「海、山……自然が溢れる場所では、精霊が集まりやすいのだ。この意味が分かるか?」 フォロンは、少しだけ考えて答えた。 「精霊は……人の善き隣人じゃないということ?」 その答えに、コーティカルテは目を丸くして驚いた顔をした。そして、すぐに破顔し笑い声を上げた。 「フォロン、どうしてそうなる? ……まぁ、フォロンが考えたことも分からなくもないが」 精霊は人の善き隣人、それは人と精霊の関係を表した言葉である。ただ、それは多くの人がそう認識しているというだけの1種の社会通念的なものであり、また、そうあってほしい、そうあるべきだという理想的なものであった。精霊をよく知り、そして、精霊との付き合いが長い人であれば、もう少し違った解釈をしている。中には、精霊との関係はギブアンドテイクのドライな関係だと言い切る人もいる。もちろん、それはほんの少数の話であるが。 「フォロン……精霊が自然が溢れる場所に集まるのは事実だ。だが、それでも我々は、人と共にあろうと望むだろう」 「どういう意味?」 コーティカルテの言葉の意味を理解できずにいるフォロンが、首を傾げた。コーティカルテは、ふむと少し考え込んで、それに答えた。 「結論を言うなら、人が神曲を奏でることができるから、だな」 フォロンは黙ってコーティカルテの話の続きを聞いた。 「人が……フォロンが奏でる神曲は、いつも私を熱く、大胆に、激しく、惑わせる」 「……っぅ!?」 コーティカルテの、あまりに直球な物言いに、フォロンは息を飲んで顔を赤らめた。それを横目で見ながら、コーティカルテは恍惚とした表情で話を続けた。 「だから、精霊は神曲を奏でる人の傍にいるのだ。これまでも、これからも」 そこまで言って、コーティカルテはフォロンの顔をじっと見つめた。未だに頬に赤みの残るフォロンは、そのコーティカルテの瞳に吸い込まれそうになった。 「でも、それでも……この海のように精霊が集まる場所があるのはなぜなの?」 「そうだな……それは、」 コーティカルテは、そこでいったん区切って再び言葉を紡いだ。 「神曲楽士の数が圧倒的に足りないから、というのが1つの理由ではあるな」 「数が?」 たしかに、神曲楽士として精霊と交わることができる者はほんの1握りの人間だけであった。神曲学院が設立され、神曲楽士を育成する制度が整っているのにもかかわらず、最終的に神曲楽士と認定されるのは、それこそ選ばれた人間なのである。 「そうだ。人には見えぬだけで精霊は数多く存在している。それらを全て満足させるだけの神曲楽士には、まだ全然足りていない」 フォロンは、神妙に頷いた。 「だからこそ、精霊は神曲の聴ける自然がある場所に集まるのだ」 そこで、コーティカルテは付け加えるように咳払いをして、 「もっとも、人の奏でる神曲が麻薬なのに対して、そうした場所の神曲は良く言って栄養剤、サプリメント程度の効果しかないのだがな」 フォロンは、丁寧に説明をするコーティカルテの横顔を見つめた。そして、このコーティカルテ・アパ・ラグランジェスという存在がフォロンとは異なる存在――精霊なのだということを改めて知る。ただ、それでも、先程コーティカルテが言ったように、フォロンはコーティカルテの傍にずっといるのだろう、これからもずっと。そう、漠然とフォロンは感じていた。 「……大体、こんなのを神曲と呼ぶのは、私は好かないのだ。いくらなんでも、神曲は言い過ぎだろう。フォロンもそう思わないか? せいぜい、子守唄ぐらいが良いところだろう」 「あはは……」 貴重な話を聞けたのは良かったが、コーティカルテの方の話に熱が入ってしまい、結局フォロンはコーティカルテが満足するまで「あぁ」とか「うん」とか相槌を打つ羽目になったのだった。 辺りは、夕暮れに包まれつつあった。 「ヤツバーン海運?」 電話口の向こうから、野太い男の声が聞こえてくる。あまりに大きい男の声は、受話器から多少耳を離していても聞こえるほどであった。 「えぇ、何か聞いてないかしら?」 ユフィンリーは電話の相手に尋ねる。だが、電話の相手の声は困ったような調子で返してきた。 「う~ん、そんなこと聞かれても私ゃ精霊課ですからなぁ……部署が違うと思うんじゃ?」 「いいじゃない、別に。お互い持ちつ持たれつの関係じゃないの」 ユフィンリーがそう言うと、電話の向こうから豪快な笑い声が響いてきた。ユフィンリーは思わず、受話器を遠ざける。 「ま、たしかに何か後ろめたいものがあるらしいな。実際、小さなことでいくつか被害届が出ていたはずだ」 「それ、本当?」 「あぁ。それに噂を加えるなら、結構な数になるんじゃないのか?」 ユフィンリーは、手元の資料に目を通しながら電話の相手に尋ねた。 「こっちでも、いくつか拾ってみたんだけど……ちょっと信憑性がないわね」 ユフィンリーが溜息をつく。すると、電話の向こうから、くぐもったような笑い声が届いた。その調子に、思わずユフィンリーの眉間に皺が寄る。 「たしかに噂からでは何も得られないだろう……だが、まったく何もないわけではなさそうだ」 「……何か掴んでいるの?」 ユフィンリーが尋ねるが、相手の男はフフフと意味深に笑うだけである。 「さすがに全部は話せないが、私たち精霊課も動いている……と言えば分かるだろう?」 「まさか……っ!?」 精霊課が動いているということは、つまり、精霊が関連している事件に他ならない。たしかに、ヤツバーン海運では精霊を雇用していたはずだが……何か裏があるということだろうか? 素早くそこまで考えを巡らせると、ユフィンリーは電話へと意識を戻した。 「さすがに、そっちのことと関係しているかまでは分からんが……私たちが知っていることはそれぐらいだな」 「そう、ありがとう。助かったわ」 ユフィンリーが礼を言うと、電話の向こうから野太い声が響いてきた。 「気にしなさんな。そちらの事務所には何度もお世話になってますからな」 その言葉に、ユフィンリーは電話で見えないのにもかかわらず微笑んでみせた。そして、静かに受話器を下ろした。 「……いよいよキナ臭くなってきたわね」 手元の資料を弄びながら、ユフィンリーは次の1手を考え始めていた。 「うぅぅぅ~~~、納得いかないっ」 「ペ、ペルセ……いい加減、帰らない?」 さて、フォロンとコーティカルテが楽しげに浜辺を歩いているその後ろ、距離にして100メートルほどだろうか。物陰に隠れるようにして、2人の後を付けている少女がいた。言うまでもない、ペルセルテとプリネシカの双子コンビである。1度は帰ると言ったものの、2人のことが気になったペルセルテが、反対したプリネシカを強引に押し切って尾行していたのだった。 「ううう、コーティカルテさんったらあんなに先輩にくっ付いて……っっ!」 しかし、せっかくのプリネシカの忠告も、ペルセルテの耳には届いていないようである。ペルセルテは、2人の一挙手一投足を全て見逃すまいと全神経を集中していたのだ。何かあれば、すぐにでも駆け出しそうな迫力が、今のペルセルテにはあった。 「ペルセ、そ、そんなに引っ張らないで……!」 と、プリネシカが抗議しても、それがペルセルテに聞こえているとは到底思えなかった。事実、先程からずっと、ペルセルテのプリネシカの手を引っ張る強さは変わることなく一定のままである。おそらく、ペルセルテ自身、自分がプリネシカの手を引いていることなど、完全に頭の中から抜けていたのだろう。今、ペルセルテの頭の中を締めているのは、間違いなくフォロンのことである。もちろん、コーティカルテに関しても、ペルセルテの目には入ってはいるのだろう。だがしかし、それはあくまでもフォロンに関係しているからであり、現在そのフォロンの隣を1人占めしているからであった。 ちなみに、普段なら、すぐにでも2人の間に割り込んでいくペルセルテが、飛び出していかないのには理由があったりする。それは、昼間のことである。 それは、フォロンたちが浜辺についてすぐ――コーティカルテとペルセルテがフォロンの所有権を巡ってビーチバレー対決を始めた時間にまで遡る。時間にしてみれば10分にも満たない時間でしかなかったのにもかかわらず、その対決は周囲の海水浴客を大いに沸かせたのだった。だがしかし、それだけの盛り上がりに対して、その決着は想像以上にあっけないものになったといえる。 「そら……っ!」 コーティカルテが圧倒的優位で進めていた対決は、ペルセルテに逆転の策があるはずもなく、ペルセルテが負けるのも時間の問題となっていた。実際、砂の上での激しい運動は予想以上にペルセルテの体力を奪っていた。その足元は頼りなく、コーティカルテが打ち出すビーチボールに完全に踊らされている状態である。しかし、それでもペルセルテはよく粘った方である。それだけペルセルテの想いが強かったということなのだが、それはコーティカルテにとって苛立たしい事実でもあった。 「あぅ……!?」 コーティカルテの放った一撃を何とか弾き返したペルセルテだったが、それが結果として彼女の首を締めることになった。ただ弾かれただけのボールは、フラフラとコーティカルテの真上へと上がったのだ。それを見越してか、すでにコーティカルテは助走を終えており、軽々と上空へと舞い上がっていた。 「あ……っ!」 それを見たペルセルテは、なんとかそれを迎え撃とうと構えを取ろうとするが、逆に砂に足を取られて体勢を崩してしまう。 「ペルセ……っ」 「っっ……コーティ!」 2人の対決を見守っていたプリネシカとフォロンが、ほぼ同時に声をあげる。しかし、その声が届く頃には、すでにコーティカルテは渾身の力でボールを打ち出していた。誰もが、この勝負の終わりを予感しただろう。そして、次の瞬間にパァンという甲高い破裂音が周囲に響き渡ったのだった。 「きゃ……っ!?」 「なんだっ?」 2人の対決を見ていた観客からどよめきの声があがる。その瞬間に何が起きたのか正確に把握していたのは、おそらく数人だけだっただろう。なぜなら、ほとんどの人がボールの行方を追って周囲に視線を彷徨わせていたからである。 ――ボールが忽然と消えてしまった……ように見えたからである。 そして、今更ながらの滞空を終えて、不満顔のコーティカルテが着地するのと、ペルセルテが――気が抜けたのだろう――地面にドタッと突っ伏したのがほぼ同時であった。若干遅れて、ヒラヒラと何かが落ちてきて、それをコーティカルテが手で受け止める。それは、ビーチボールの成れの果て、つまり空気が抜けた状態になっていたものであった。コーティカルテが不満顔なのは、これが原因である。 「ふんっ、もう少しで決着が付いたというのに……不甲斐ないやつめ」 本当に残念そうにボールに向かって毒づくコーティカルテの脇を通り抜けて、フォロンとプリネシカがペルセルテに駆け寄る。幸い、多少の発汗が見られるだけでペルセルテの意識ははっきりしていた。むしろ、大袈裟に2人から心配されたことでペルセルテは困ったように苦笑いのような顔を――今にも泣き出しそうな顔を――浮かべて、それを見たプリネシカはほっと胸を撫で下ろしたのだった。ただ、そうはいってもすぐには立てるはずもなく、フォロンがペルセルテを負ぶって日陰へと連れて行ったのだった。忌々しそうな目で、コーティカルテがそれを見送りながら。 結局、そのあとフォロンは、ペルセルテに付っきりになったのは言うまでもない。優しいフォロンは、ペルセルテを放って置いて遊ぶことができるはずもなく――プリネシカも気にしなくていいとは言ったものの――、結果として、ペルセルテはフォロンを独占できることとなった。 そして、そのことに対してコーティカルテは何も言わなかった。 たしかにペルセルテは思い立ったら即行動、全速前進が持ち味である。しかし、決して周りを見ないわけではない。結局のところ、ペルセルテが今この時間をコーティカルテに譲っているのは、昼間の出来事における借りを返すためであるのだった。たとえ相手が精霊だろうと何だろうと、ペルセルテの信条はフェアな勝負なのである。だからこそ、すぐにでも飛び出して行きたい衝動を押さえ、その代わりにプリネシカの手を強く握り、あくまでも遠くから2人の様子を見守る――という名目の監視を行っているのだった。 PR |
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